ストレスチェック義務化が全事業場へ拡大

近年では、働く人々の心身の健康を守ることが企業の重要な課題として注目を集めています。特にストレスが原因で不調を抱える労働者が増えていることから、政府は職場のメンタルヘルス対策をより強化する方向に動いてきました。

その一環として、これまで従業員50人以上の事業場に義務づけられていたストレスチェック制度を、すべての事業場に拡大する方針が打ち出されています。小規模事業場の担当者にとっては少しハードルが高く感じるかもしれませんが、情報収集と早めの対策に取り組むことで、従業員の健康保持や企業イメージの向上につながるでしょう。

ストレスチェック義務拡大の背景と目的

まず、ストレスチェック制度とは何かを振り返ってみましょう。2015年に労働安全衛生法が改正されて導入されたこの制度は、働く人々の心理的な負担を定期的に調査し、必要なフォローアップを行うことでメンタルヘルス不調を早めに発見・対応することを目的としています。これまでは従業員50人以上の事業場に対してのみ実施が義務づけられていましたが、50人未満の事業場でも同様に取り組む必要があるという考え方が広がりつつあります。

その背景には、過重労働やハラスメントなどが原因で心の健康を損なう人が増えている実態があります。企業規模の大小にかかわらず従業員はストレスを抱える可能性があるため、小規模事業場においても十分な対策を行うことが社会的に求められてきました。そこで、2024年11月に公表された中間とりまとめにおいて「すべての事業場へストレスチェックを義務化する」方針が示されています。

50人未満の事業場におけるストレスチェック実施状況

現状では、従業員50人未満の事業場はストレスチェックの義務が課されていないため、実施率はあまり高くありません。コストや時間、専門家の確保などの面で難しさがあることが主な理由だと考えられます。さらに、小規模事業場では担当者がほかの業務も兼任している場合が多く、ストレスチェックに十分な労力を割きにくいという声もよく聞かれます。

一方で、すでに任意で取り組んでいる事業場では、従業員の心理的負担を早めに把握できたり、離職を予防できたといったメリットが報告されています。小規模だからこそ従業員同士のコミュニケーションが取りやすい場面もあり、結果をもとに柔軟に職場環境を見直せる利点があるのも事実です。義務化によって負担が増えるかもしれませんが、長期的には従業員の健康と企業の持続的な成長につながる可能性が高いでしょう。

全事業場ストレスチェック義務化の影響

すべての事業場でストレスチェックが義務化されると、多くの企業が実施体制を整えなければならなくなります。チェック項目の準備や結果の分析、専門家との連携など、これまで経験のない作業が増える点は否めません。しかし、メンタルヘルス対策を充実させることで労働者の不調を予防でき、離職率の低下や生産性の向上といったメリットが期待できます。

また、健康経営を意識する企業が増えている昨今、メンタルヘルスへの配慮が行き届いている事業場は社会的にも高い評価を受けるようになりました。採用活動の面でも「ホワイト企業」というイメージを持ってもらえる可能性が高まり、人材確保や定着率の向上につながるでしょう。

50人未満の事業場のストレスチェック義務化の時期

2025年3月14日には、ストレスチェックの義務化を小規模事業場にも拡大する関連法改正案が閣議決定され、国会へ提出されています。これにより、従業員50人未満の事業場も義務対象となる見通しが一段と高まったといえるでしょう。具体的な施行時期は今後の国会審議や省令・指針などの整備によって最終決定されるため、最新情報のチェックが欠かせません。

実際に義務が始まるまでには一定の猶予期間が設けられると見込まれていますが、いざ施行されるとなると担当者の負担は大きくなります。早めに準備をスタートすることで、スムーズに対応できるようにしておきたいところです。

ストレスチェックの外部委託が推奨される理由

小規模事業場では、社内だけでストレスチェックを実施しようとすると大きな負担がかかります。そこで外部の専門家やサービスに委託することで、調査票の準備から結果の分析までを一括して依頼できるようになるため、担当者の業務負荷を軽減しやすくなるでしょう。

また、第三者に委託することで、従業員が安心して受検できるという利点も見逃せません。プライバシーが保たれやすい環境での回答は正確なデータ収集につながり、結果をもとにした職場改善の精度も高まります。さらに、専門家からアドバイスを受けられるため、チェック結果を実際の健康管理や職場改善にどう活かすかという部分までサポートしてもらえる点が大きなメリットです。

具体的な対応策・準備ポイント

現状把握と体制づくり

まずは自社の安全衛生管理体制やメンタルヘルス対策の現状を整理し、経営陣や関係部署と共有します。小規模な組織ほど、従業員全員が状況を把握しやすいため、スムーズに合意形成を進められるでしょう。

予算や委託先の検討

ストレスチェックにかかる費用を概算で見積もり、どのサービスを利用するかを比較検討します。産業医や社労士、カウンセラーなど、どのような専門家に協力してもらうかも重要なポイントです。

結果の活用とフォローアップ

ストレスチェックの結果を分析したあと、高ストレス者への早期対応や職場環境の改善に向けて行動を起こす必要があります。面談や休業制度などを適切に活用しながら、専門家と連携してサポート体制を整えていきましょう。

継続的な対策と運用

ストレスチェックは一度きりで終わらせるのではなく、継続的に実施して結果を検証することが大切です。PDCAサイクルを回して職場環境を少しずつ改善していくことで、従業員が働きやすい職場づくりを目指せます。

まとめ

ストレスチェックの義務化がすべての事業場に拡大される流れは、小規模事業場にも少なからぬ影響をもたらします。導入のハードルが高いと感じるかもしれませんが、早期に準備を始めれば担当者の負担を分散でき、メンタルヘルス対策を効率的に進めることができるでしょう。従業員の健康を守り、企業イメージを向上させるためにも、このタイミングで外部委託や専門家との連携を検討してみてはいかがでしょうか。

参照元：厚生労働省｜「外国人雇用状況」の届出状況まとめ（令和元年10月末現在）
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09109.html

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